大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和43年(む)997号 決定

主文

被疑者に対し昭和四三年一二月二五日なした勾留の裁判のうち、勾留場所を福岡拘置支所と指定した部分を取り消す。

被疑者に対する勾留場所を東福岡警察署代用監獄とする。

理由

一、本件準抗告申立の理由は、検察官提出の準抗告申立書のとおりであるからこれを引用する。

二、本件記録によれば、昭和四三年一二月二五日福岡地方裁判所裁判官は、右被疑者に対する強姦被告事件について福岡地方検察庁検察官のなした被疑者を東福岡警察署代用監獄に勾留する旨の勾留請求に対し、これを福岡拘置支所に勾留する旨変更したうえ勾留の裁判をなしたことが明らかである。

三、ところで、監獄法第一条の趣旨に鑑みると、勾留の場所は原則として拘置監たる監獄とすべきものであって、これを代用監獄たる警察署付属の留置場とするのは、やむを得ない場合に限られることはいうまでもないが、本件記録ならびに疏明資料によれば、まことに遺憾なこととはいえ、福岡拘置支所における現下の収容人員に対する同支所職員数ならびに捜査官の使用できる同支所の取調室数が著しく不足しているなど人的物的欠陥の生じていることが窺える上に、本件被疑事件が数名の共謀犯行であって、捜査の現段階ではいまだ各犯人の分担行為の確定が困難であるため、関係人と被疑者との面通しまたは対質取調べや、被疑者立会による犯行現場の実況見分ないし検証の必要性も認められ、被疑者を右拘置支所に収容したまま、これが捜査を遂行するには同支所の現況に照らし種々の不便不都合の生じ得べきことが認められるばかりでなく、同支所の正常な管理運営に支障をきたす虞れのあることも否定できないところである。従って、本件においては、被疑者を代用監獄たる東福岡警察署の留置場に収容するのは、まさにやむを得ないものと認めるのが相当である。

四、よって、被疑者の勾留場所の是正を求める本件準抗告の申立は理由があるので、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小川冝夫 裁判官 佐々木一雄 白井博文)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例